「夢の続き71」ユノ×チャンミン
ユノの目は絵本コーナーを三周した。
そして、四周目に入った。
「あの、ユノさん!なかったらいいです」
これで時間がきそうだ。
「え、あ……うん」
ユノが肩を落とした。
「今度本屋で買って来る」
「いやいや、大丈夫ですから。一緒に本屋に行くこともあるでしょうし、その時に見せて下さい」
「でも全部で四巻あるよ?」
「え、そんなに冬支度を?」
ねずみの世界は思った以上に大変だな。
「あ、ごめん。冬支度の本は一冊なんだけど。はるなつあきふゆのセットになってるんだ。どれもいいお話だから……」
「はあ」
でもいい加減この人には貯金してもらわないと、
「まあ今度本屋に行った時、見てみましょう。買わなくていいですから」
ユノが寂しそうに「うん」と返事をした。
「好きな本読んでて下さい。俺小説コーナー見てます」
「うん。分かった」
ユノを残して、俺はハードカバーの小説コーナーに来た。
その殆どは漢字が難しくて辞書片手に読むしかないんだけど、その中でも比較的読みやすいのはある。
本当に読みやすいのは漫画なんだけど。
一冊手に取ってみる。
なるほど、主人公は俺と同じ大学生か。
そして、中国人のマフィアと出会う。
おお、なんかすごい設定だな。
そして、二人の男は……。
パタン。
俺は本を閉じた。
あ、なんだ漫画も置いてあるじゃん。
昔の少女漫画かあ。
日本ではこんな漫画が流行っていたのか。
なになに?吸血鬼?
ん?兄弟なのか?
そして、二人の兄弟は……。
パタン。
いや、最後まで読んでなかったんだけど。
俺は月刊、「囲碁」を読みながら、絵本コーナーの方を見た。
あそこだけ窓のカーテンが開けられて、日差しが降り注いでいる。
伸びてきた髪に光があたって輪が出来たユノが子供に囲まれている。
子ども達に絵本を読んでいるようだ。
楽しそうに笑っている。
遊んでもらえて良かったね
……ユノ。
俺は満足して頷いた!
只今11時10分(ユノの退役まで451日)