「Kiss me,baby.2」ユノ×チャンミン
ルール①―――チャンミンが1分でも遅刻したら、俺にキスされること。
「何言ってるんですか?」
相変わらず移動車の中で、意図せず口が半開きになった。
「俺、リーダーだよ?」
頬を染めたリーダーの瞳孔は開いている。
「受け入れるわけないでしょ」
「俺、本気で怒るよ?」
「脅迫罪で訴えます」
「リーダーの命令は絶対なんだよ?」
うっとりと見つめられた。
「この世に絶対なんてものはない」
「じゃあチャンミンはこれから遅刻したらどう償うの?」
「誠心誠意をもって謝ります」
「謝られても俺、嬉しくないよ?」
「もうこの話は終了しましょう」
「ううん、だめ。絶対するから」
このやりとりが一日中続けられた。
「分かりました」
根負けした。恋の力が強すぎた。
ルール②―――ユノが1分でも遅刻したらルール①を取り消すこと。
こうしてルール①と②をもって、
俺達の戦いの火ぶたが、切って落とされた。
「明日、ヒョンの家のドアが開かなくなればいいのに」
「チャンミン酷いこと言わないでよ」
「さっき俺の腕時計の時間遅らせようとしたのはどこの誰ですか?」
「……」
とにかく隠さなくなってからのユノはすごかった。
人前ではいつも通り平然としている。
それがひとたび二人きりになると……
「チャンミン」
「はい」
俺は楽屋で、新曲の日本語版の歌詞を読んでいて、顔を上げる。
そして絶句した。
「ば……」
声が出た。
「うん、薔薇」
「いえ、俺はバカですか?って言おうとしたんですが、悪いと思って止めたんです」
「でも言ってるじゃん!」
花束を抱えて涙目になったユノが俺に声を荒げた。
「そんなもんどっから持ってきたんですか?」
「え、ずっと持ってきてたよ」
「だからあんなボストンバッグ……」
この人今日からスタッフになったのかと思った。
「どうしてもチャンミンにあげたくなったんだ。受け取ってくれる?」
ピンクの薔薇の花束を抱えて、ユノが顔を赤らめて笑った。
俺は片手で受け取りながら、これは本当にとんでもないことになったぞ
と、思った。
つづく
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一度に五話更新はやめました。