「Kiss me,baby.10」ユノ×チャンミン
「ヒョン」
次の日、また誰もいなくなってしまった控室にて。
「なに?……チャンミン」
今日もいつも通り、リニューアルされたユノが隣に座って熱い視線を送って来る。その目に怯みそうになるのに耐えて、口に出した。
その手首には、しっかりあれがつけられている。
「なんでヒョンは俺のこと好きになったんですか?」
ユノはその顔のまま頬を染めた。
「聞きたいんだ?チャンミン」
無表情で黙った俺の顔を、ユノが更に覗き込んだ。
「気になるんだ?……チャンミン」
なんか全然聞きたくなくなってきたな。
「やっぱりいいです」
「あのね、一年前、俺彼女と別れたでしょ?」
「……」
「その時さ、チャンミンすごく優しく慰めてくれたんだよね」
「はあ」
そんなに優しくした覚えはないですけど。
「その時にね、ああ俺が好きになる相手は……『こっち』……だったんだなって……」
そう言って、頬を染めたユノがその様子を思い出しているように目を伏せた。
俺は呆然と口を開けた。
「『こっち』……になるの早すぎませんかね……」
頬を染めたままのユノが首を振った。
「そんなことないよ」
「そんなことあるよ!」
ユノが目を瞬かせる。
「そんなこと言ったら、今まで失恋するたびにヒョンは男女構わず好きになってるじゃないですか!」
ユノが少しまともな顔をしてちょっと視線を上にした。
「……まあ、確かに」
「でしょう?それ、もしかしたらヒョンの考え違いかもしれないですね?失恋してちょっと気が動転してるのかもしれませんよ!」
ユノがまた視線を上にしている。
俺は身を乗り出して、開いた片掌をもう一方の手の握った拳の腹でぽんと叩いた。
「ヒョンは俺のこと好きじゃないんだと思います!失恋のショックでどっかがやられただけなんじゃないかなあ!」
ユノが俺を見た。
「こんなに長い時間?」
「そこ、ですよねえ……」
俺は乗り出した身を戻しながら、元から下がり気味の肩を落とした。うん、やっぱりこれは駄目だったな。どっかがやられてしまった後なら尚更だめだ。
つづく