「Kiss me,baby.11」ユノ×チャンミン
ユノはもう元通りの熱い視線を送っている。
「チャンミンだからだと思うな。チャンミンが一年前のあの時、いつもと違う一面を俺に見せて、それがいつもよりすごく優しかったから好きになっちゃったんだよ」
俺は前かがみになって頭を抱えた。
「俺は一年前の俺をここに呼んで、そんなこと決してしませんって土下座して言うまで帰しません」
「それにさ、俺、これってすごいラッキーだと思ってるんだ」
「そうですか。羨ましいな」
同じ体勢で俺は相槌を打つ。
「だって好きな相手とずっと一緒にいられるんだよ。こんなの今までなかった。忙しくて、気が付いたら会えない彼女を泣かしてばかりだったし、結婚できない問題だってあるし」
頭を抱え込んだまま、ユノを横目で見る。
ユノはいつの間にか、俺でなく正面に向いて、その口元に片手を置いて、また思い出に振り返っているような顔をしていた。
「チャンミンを好きになった時、これなら、相手の涙を見ることもない、俺だってイライラすることもない、落ち着いて好きな人間と堂々とずっと一緒にいられるかもしれないって思ったら、目の前の相手がすごい魅力的に見えたんだよ。男とかどうでもよくなった」
「なりますかね……それ」
うらみがましく呟いた言葉にユノが鼻から息を出して笑う。
「まあ、元から人間的には魅力があるって知ってるし。でもやっぱり普段と違う一面は大きかったな」
頭に置いていた手を下げて、ユノに向いてから溜息をつく。
「でもうまくいかない恋ですよ?丁度今、俺彼女いないだけで、これから多分できますよ」
そこははっきり言っておく。正面を向いたままのユノが言う。
「俺は今回、うまくいくことなんて求めてないよ。お前のこと知ってるし、男同士なんてスキャンダル洒落にならない。彼女だって作れよ。でも俺は好きだし、もう遠慮なく伝えられるし、どんだけ嫌がられても、彼女作られてもお前はずっと一緒にいるんだから」
これって本当にラッキーだよな、と言ってユノはまたふと笑った。
「はあ」
と、俺は言った。
それから嬉しそうにユノは手首のそこに目をやる。
俺はそれを見ていた。
もしかしたら、このユノは、
ずっと、同じユノだったのかもしれない。
もしかしたら、
このユノは、
どこもやられていないのかもしれない。
とすると、
これはかなり……
つづく