「This is love comedy.29」ユノ×キュヒョン
あれから、やっぱりキュヒョンの人気は衰えることなく、上がり調子で、次のミュージカル出演と来年にはシングル曲の発売も決定した。
俺は相変わらず自分の国と日本とを行ったり来たりで、あの時撮影していたドラマの視聴率も順調で、忙しい毎日を送っていた。チャンミンもこの宿舎を出たことだし、そろそろ俺も自分の部屋を借りてもいいかもしれないと思いながら、
今日は久しぶりの休日だった。
すごいぞ。
俺は布団から、顔を出した。
なんだあの音は。
携帯電話を開く。
マネージャーじゃないな。
戻す前に、何となくもう一回開いて、じっと眺めた。
そして、ベッド脇に放り投げた瞬間。
バンバン!バンバン!
やっぱり、すごい。
でも、あの音はあいつじゃない。
だって、あの、ブザーの音と共に叩く音はもっと沢山の……と思ったら、開いた音と同時に、すごい人数の足音が聞こえて、思わず起き上がる。
な、なんで?と思った瞬間、自分の部屋が開け放たれた。
固まる。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
あれ?何で俺、リョウクに敬語使っちゃってるんだろう。
「ちょっとユノヒョンいいですか?」
「え、ああ。えっ?なに?」
「いいって」
と、リョウクが後ろに声をかけた。
よかったよかった、とか、言いながら、俺の部屋に入ってくる。全員が入った。
俺はベッドの真ん中で座ったまま、また布団をかぶって硬直している。
「というわけで、もう分かってるだろう?」
いきなり切り出されて、視線を斜め上にする。考えてから聞いた。
「キュミン、何言ってんだ?」
「俺の名前はソンミンだよ」
「いやいや、全然分からないよ」
「分かりました。俺が言います」
立っていたシウォンが口元で手を合わせて、言った。
「ユノヒョン、もう分かってるでしょ?」
「お前、キュミンと同じこと言ってるだけだろ」
「分かった、分かった、俺が言う」
ウニョクが前に出てきた。
「ユノヒョン」
「うん」
「分か」
俺は布団をかぶり直して横になった。
「ユノ!分かるだろ!」
イェソンの声がする。あと、どこかでクッキーかなんかを食べてる音が聞こえる。
「キュヒョンが毎日泣きながら酒浸りなんですよ」
俺の枕元で、リョウクが言った。
息を吐きながら、起き上がる。
「キュヒョンが?」
立っているリョウクを見上げる。
「うん」
頷いたのを見てから俺は後ろ頭をかいた。
「……誰だって、毎日のように会ってた人間がいなくなると寂しいだろ」
「それにしては行き過ぎだと思うけど」
リョウクが俺を覗き込む。
「恋愛感情じゃないよ」
「何でそんなこと分かるんですか?」
「何でって」
口角を下げているリョウクを見上げてから、俺は話し始めた。
『箸』の一件を。
「あれは俺たちが食事をしていた時のことです」
「なんだこの雰囲気」
ドンへ、いたのかよ、早く出て来いよ、親友だろ。
「……だから、別にキュヒョンは俺の事好きじゃなかった」
と、言って俺は話し終えた。
「なるほどな」
親友が頷いた。
「いや、それ多分全然関係ないよ、ユノヒョン」
リョウクが腰に手を置いて唖然として俺を見る。
「うん、全然関係ないな」
胡坐をかいているキュミンが頷く。
「ドヤ顔で『箸』とか言うんだもん、驚きましたよ」
シウォンが口元で手を合わせたまま言う。
「いや、何でだよ。関係あるだろ!」
「もういいから早く行きましょう」
リョウクが俺の手を引っ張った。
「え、何?」
「早く」
手を引かれるまま立ち上がる。全員が立ち上がって、俺を部屋から押し出す。
「いやいや待て待て!俺パンツ一枚だから!」
あ、いや、それもなんだけど、
まず言う事を忘れてた!
「お前らどうやって入ったんだよ!」
このマンションどうなってんだ!
部屋の外に、口元に手を当てて、可笑しそうに笑っている弟がいた。
「お前な……」
つづく