夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「This is love comedy.9」ユノ×キュヒョン



「ユノヒョン!」




満面の笑みで、私服のコートとパーカー姿のキュヒョンが両手に下げた袋を掲げる。



「お疲れさま」



苦笑しながら、俺はその頭を撫でる。俺の可愛い弟と同じだ。もうこいつの本意は分かったし、こんな事しても恐くない。キュヒョンは不思議そうな顔で、立ち尽くした。



「入れよ?食おうぜ」



「……ユノヒョン、何かありましたか?」



変なやつだな。「俺のこと好きになりましたね!」だろ、そこは。


「何もないから、入れよ」


「何か元気ないですよ?」


おお、そこか。そこを突っ込むのは何か恐いからやめてくれ。


キュヒョンは首を傾げながら、惣菜を食卓に並べ出す。ちなみに今日の料理もどれも美味しそうだった。キュヒョンお得意の弁当箱に入ったのもあった。


「ユノヒョン、どうぞ」


まだ眉をひそめたキュヒョンの持ってきた箸を受け取る。


「ありがと」


そして、これだった。俺は心もとなく笑う。俺が気づいた理由。とっくの昔にお前からばらしてたと思うよ?キュヒョン。


お前の分の箸を持ってきた俺に、「俺のこと好きになりましたね?」って言ったよな。

お前には、好意がないとできないくらいのもんなんだよ。でもお前はできていなかった。友達としても俺達は別にそこまで仲良くなかったからな。俺は恋愛感情からなんかじゃなくて、ただ一緒に飯を食う人間に一度に持って来れば、手間がはぶけるし、飯を食うくらいの仲の相手には、そんな微々たる手間は何の問題にもないからしただけなんだけど、大抵の人間はそうだけどな!キュヒョン!


でもそれからお前は俺の分まで箸でも何でも持って来るようになった。好きな相手にはそれをしないといけないって言う学習能力で。一度冷蔵庫を開けたくらいで、数日後もその中のどこに何が入ってるか把握している様な覚えの良いお前だから、そんな事容易い。

けどそれはただの学習能力で、恋愛感情じゃない。


席に着いてもキュヒョンの表情は戻らない。早く戻ればいいのに。



「ビール飲む?」



そう言った俺の顔を見つめる。


「もうありませんよ?」


「買っといたよ。いくらでも飲んでいいよ」


その表情が明るくなる。


「俺のこと好きになりましたね!」


「なってない」


だから、安心して飲めよ。心の中で苦笑する。

それに、やっぱり占い師に言われたくらいでそんなに簡単に人の性癖なんて変わらないしな。ってか最初に占い師の話だしときゃ良かったな!俺はまず言うことをまた間違えていたらしいな!


足取り軽く冷蔵庫にキュヒョンが向かう。


「ユノヒョンも飲みますか?」


「うん」


「え?」


声を張る。


「飲むよ!」


目の前にグラスに注がれたビールが置かれる。


「量多かったですか?」


「いや、大丈夫」


覚えていないけど、この前飲んだ時と同じ量だろう。


「乾杯しよう、キュヒョン」


「はい!」


キュヒョンが笑顔になる。俺はこいつの嫌いな野菜を口に運ぶ。


「うん、うまいよ」


「お母さんに伝えときます!」


「うん。伝えといて」


「え……はい」


「なあ、キュヒョン」


「はい」


「俺達は付き合ってるから」


キュヒョンの箸が完全に止まった。俺は料理を口に運び続けた。


「どうしたんですか?ユノヒョン」


「飯食うだけのカップルもなかなかいいと思ってね。この付き合いなら、出来るから。食えよ」


だからいらん事考えるなよ!キュヒョン!清い交際を続けようぜ!


「はあ」


キュヒョンがちびちびと飯を食い始める。


「なあ、お前のミュージカル観に行っていい?」


その表情がまた明るくなる。


「勿論です!恋人ですからね!どの日がいいですか?」


「最終公演がいいな。俺が仕事じゃなければ」


「良いですよ!一番良い席プレゼントします!ちなみに初日の一番良い席はお母さんです!」


聞いてないよ。


「うん、ありがとう。チケットは買うよ」


「ユノヒョン!飲みましょう!」


それから、キュヒョンはとことん飲んで、珍しく酔っ払った。


で、玄関で俯く。


「泊まりたいんですけど、今日は実家に帰るってお母さんに約束したんです」


「そうか。いつも料理作って頂いて有難うございますって言っといて」


きのこ頭を撫でる。キュヒョンは撫でられながら、火照った頬のまま、顔を上げる。お前、大分酔ってるな。


「ユノヒョン、今日どうしました?」


「俺はどうもしないよ。それより、タクシーで本当に大丈夫か?俺も飲まなきゃ良かったな。ちょっと待て。やっぱり誰かに迎えに来てもらおう」


玄関にキュヒョンを残して、ドンへに電話をかける。


「ああ、ドンへ?すまん、キュヒョンが酔った。誰でもいいからよこしてくれ、そのあとこいつ実家に送って行って」


携帯電話を切る。


「キュヒョン、すぐ来てくれるから、待て」


「ユノヒョン!」


玄関に戻った俺にキュヒョンが抱きついて来た。おい!お前、さっきの俺の話聞いてたのか!もやしみたいなくせして結構力強いな!逃げようとして壁に頭をぶつける。


「っ」


「俺を捨てないで!」


キュヒョンがしがみついてくる。こいつの思考回路はどうなってんだ!


「おい、キュヒョン!」


はがそうとしてもはがれない!しかも半分寝かかってるな!首に腕を回されて、締め付けてくる。


「苦しいって!」


「お願いユノヒョン!」


はあ……。その背中を軽く二度叩く。



「さっき付き合ってるって言ったろ?お前いい加減俺の話聞いてくれよ?」



で、お前は寝てるんだろ!このパターンは読めてんだよ!









つづく


「Kiss me,baby.7」ユノ×チャンミン


「ねえ、チャンミン」



「はい」



次の日、休憩時間中、また控室に人がいなくなってしまった。


俺は、ソファーで目を瞑って、これから来るだろうユノの熱い視線をかわすつもりだった。


仕方なく目を開けて、隣のユノを見た。



「俺ね……ちょっと考えたんだ」



相変わらずまばたきしながら、真夏な目をしている。



「はあ」



「あのね、俺達のルールなんだけど」



俺は目を輝かせた。



「やっぱりあんなの可笑しいですよね!ヒョン!」



ヒョン(ユノ)は下を見て、手首をその視線の先に持ってきた。



「俺達腕時計あるじゃん?」



「はあ」



俺もその手首についた腕時計に目をやった。



「これ、一分でも二人の時間が違ったらさ、だめだよね?」


「……俺のも電波時計だったでしょ?忘れましたか?」


「それでね」


俺に背中を向けて、横にある自分のリュックを開いている。


「……」


黙った俺の前に、ラッピングされた四角い箱を片手で差し出された。


ユノを見ると、少し顔を赤くしてまた上目遣いに俺を見ている。


「何を……するつもりですか?」


聞いた俺をじっと見つめてくる。

視線をそのユノに向けたま、受け取った俺は無造作にそれを破いて開けた。


「これ、俺つけるからさ」


箱の中の一つをユノが取った。


「そっちはね、チャンミンが」


俺は無表情でそれを眺める。


二つの同じ腕時計が、今一つずつお互いの手にある。


「こうしたら……良いんじゃないかと思ったんだ」


再度上目使いで、口角を上げて伺い見られた。

俺は表情を変えず手に持っている箱を見下ろした。


「……どこら……へんが良いのか……」


「あ!違うんだよ!人前じゃああれだからさ、チャンミンはしなくていい!持ってるだけで!」



ユノが俺の顔を覗き込んだ。


「電波だって……あてにならないからさ?」


頬を染めている。




「……ヒョン……これも電波時計ですけど……」











つづく







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「夢の続き」を読んでおられる方には、「どうでもいいから夢の続き書けよ」と思わせた一話でございました。

「This is love comedy.8」ユノ×キュヒョン

それから、自分達が日本にいる日や用事がある日を除いて、キュヒョンは毎日うちに来た。飯食って、帰ったり、泊まったり、でもそれだけだった。


そして、あいつとこうなってから、(どうもなっていないけれど)キュヒョンの人気は、本当に上がりだした。元から落ちていたと思わなかったし、同じアイドルなのだから、ファンはいるのだけれど、元々の活動と、ミュージカル公演を控えている上に、バラエティ番組の単独出演や、ソロシングルの話も出て来ているらしかった。でも相変わらずうちに来ては飯を食って、帰ったり、泊まったり。俺は付き合っていないと言うものの、全く接触の無いこの関係だから、その都度は言わなくなった。


んで、今日。


最近始まった俺の方の単独出演のドラマの撮影で、チャンミンは休みで俺だけ仕事。久しぶりのロケ撮になる予定が、土砂降りで中止になった。そんなわけで急遽スタジオ撮影に。スタジオセットの間に、俺が自動販売機のジュースを買いに向かっている時だった。聞き覚えのある声がして、足を止める。



「やっぱりだめかなあ?」



もう少し近づいてみる。話している奴らが自動販売機の前にいるようだし、完全に俺の知っている二人だから声をかけようと思った。


「ユノヒョンに悪いよな?」


また足を止める。

これは微妙な話だろうな。そうとなれば聞き耳立てちゃうのが人のさが。


「進展しなくてもいいんじゃない?」


「でも付き合ってるし」


ん?これは恐い話なんじゃないの?


「だって出来ないんだろ?」


「やっぱりどう見ても男だからさ。最初軽いキスなら勢いで出来たし、今でも勢いで出来ると思うけど、それ以上は想像つかない」


「でもヒョンだって進展なんか望んでないの分かってるだろ?」


「でも付き合ってるってことになるのかな、それで。こんな理由ユノヒョンに悪いって思ってるけど、折角人気上がってきたんだ俺。ミュージカル絶対に満席にさせたいんだ。俺酷いけど、出来るだけ本当に付き合ってる様にしたいんだ。だから本気じゃないことユノヒョンにはばれたくない」


二人が話しているのは廊下の角を曲がって直ぐの小さな休憩場所なんだけれど、俺は勿論その角を曲がらず立ち止まっている。さっきから気づいていたけれど、問題はその角を曲がったところに鏡があることだよ。そこには俺がうつっている。そして、うまい具合にその鏡はあいつらの前にあるらしい。

キュヒョンは見えないけれど、俺に気付いたチャンミンと鏡越しに目が合った。


俺は口の前に指を一本差し出す。


『しー』


これは、チャンミンと俺だけの、秘密だ。チャンミンが小さく頷いたのを見て、俺はそっとその場を離れた。

チャンミンは明らかに私服だったから、プライベートでキュヒョンに会いに来たんだろう。本当に仲良いな。ということはこのスタジオのどこかであいつも仕事してんだろう。


「ふう」


なるほど、好きではないけれど、付き合ってることにしたいか。まあ、きっかけから言って、そんなもんだろうとは思ったけれど。あいつらとは階も棟も変えたベンチに腰をおろす。


でも参ったな。ああ言われたら、もう俺は「酷いな、じゃあこんなのやめよう」とは言えない。だってこれは喜ぶことだから。あの馬鹿げた事情はチャンミンからも聞いてるんだし。

でも喜んで「よし!俺にばれたんだからやめようぜ!」とも言えない。


それは、あいつがくそ真面目に、俺と付き合ったおかげで人気が出たと信じているから。俺は、この二か月で、あいつが悲しむところは見たくないと思うくらいに、根は悪くないキュヒョンの人間性は買って来ている。


だから俺は秘密にするしかなかった。つまり、あいつの気が済むまでこれを続けるしかなくなった。思わず苦笑する。だけどな、キュヒョン。悪いけど、俺は気づいてたよ。お前が俺に本当は恋愛感情がないこと。



「ユ―ノーヒョン!」


「おー。お疲れ」


目の前に現れたセーター姿のリョウクが首を傾げる。


「何か笑ってましたね?ユノヒョン、それ衣装?」


「うん」


「いいね!スーツ」


「リョウクは何の撮影?」


「ブランドの!みんないるよ」


「そっか。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「なに?」


「キュヒョンのミュージカル、最終公演いつ?」


「観に行くの?喜ぶよ!確か三月の終わり!詳しい日はキュヒョンに聞いてよ」


二か月後か。


「分かった、ありがと。あとさ、俺がこのスタジオで仕事だったの。秘密にしといてくれない?」


リョウクの動きが止まる。


「うん。分かりました」


「ありがとな」


「じゃあ、行くね」


頷いて、手を挙げた俺を見てから、リョウクが駆けていく。その後ろ姿を見ながら、

俺は、ばれている嘘を明かされた時でも、少しは落ち込んだりするもんだなと思った。いい奴なのが分かっているから、尚更なんだろうな。




「久しぶりだな、お前が来るの」


夕方には仕事が終わって、帰って着替えていると玄関のブザーが鳴った。


「ヒョン……」


今にも泣きそうな顔をしたチャンミンが立っていた。「なんだよその顔」と苦笑しながら、頭に手を置く。


「入れ」


食卓に座ったチャンミンを見て冷蔵庫に向かう。立ち上がったチャンミンに「いいから」と言ってグラスを注いだジュースを出した。


「で、どした?」


「すいませんでした」


「何で謝るの?」


「キュヒョンのこと」


また苦笑する。


「知ってたよ。あいつが本気じゃないの」


チャンミンが俺を見た。


「占い師に言われたくらいで、男を好きになるなんて思ってないよ。それにさ、これって、俺が喜ぶことだろ?」


「ヒョン。キュヒョンと別れる方法があります」


うん。そもそも俺は付き合ってるって納得してないです。



「分かってるよ、チャンミン。俺から手出すんだろ?」



チャンミンが黙る。どんな理由をつけたって、その嫌悪感はあいつだって我慢出来ないだろう。でもチャンミンは俺がそんな事しないのも分かってる。



「そんな事しないよ」


ってか出来ない。


「ヒョン……」


「馬鹿だな。お前だって、あいつの気が済むようにさせてやりたいんだろ?俺に気兼ねなんかしなくていいよ」


「ヒョンはいいの?このまま付き合って」


「うん、付き合ってないんだけど」


チャンミンが少し笑う。


「付き合ってないけど、付き合うよ。あいつが気にしてるミュージカルの最終公演まで」


チャンミンの笑いが消えて、俺を見つめる。



「それがお互いの為だから。その後はあいつも俺も自由だ」


「分かった、ヒョン。俺そろそろ行かないと。今日もキュヒョン来ると思うんで、エントランスの非常用の鍵貸しときました」


「そう。お前もちょっとは遊びに来いよ。寂しいだろ?」


チャンミンが俺を見て悪戯っぽく笑う。


「最近、全然寂しくなかったくせに」


うおおおい。やめろ、そのラブコメみたいな展開。そうはならないからな!


「寂しいよ。だからまた来い」


「うん」



チャンミンが戻ったあと、俺はなぜか本当に寂しさが戻った。風呂入って、一息つくと、



また玄関のブザーが鳴った。








つづく